カーネーションはとても優れた花だった。規格外であることから、花き農家で処分されていたカーネーションが、ライフスタイルブランドとして蘇るまで。

カーネーションはとても優れた花だった。規格外であることから、花き農家で処分されていたカーネーションが、ライフスタイルブランドとして蘇るまで。

「mooneyo(もーねよ)」が取り組んでいる“新しい花体験”。それは、花が虫に食われたり、サイズが小さかったりと、規格外であることから花屋・花き市場・花き農家などで販売できず、処分予定だったものを回収して、「草木染め」「花びら染め」を行い、ライフスタイルグッズとして蘇らせる取り組みです。
今回はそんな「mooneyo」の取り組みに賛同いただき、規格外のカーネーションをお取引きさせていただいている、千葉県南房総市にある花き農家「精華園」を経営する岩田さんに、今回プロジェクトに賛同いただいた理由や日頃の取り組みなど、お話を伺いました。
 
 

大切な人への愛情や敬意を表す「カーネーション」を

年間50万本生産する、花き農家・精華園

 

 

  • 精華園さんのはじまりと、現在の取り組みを教えてください。
私の祖父が、花の生産をはじめたことをきっかけに「精華園」が誕生しました。2代目の後継ぎが私の父、3代目の後継ぎが私で、家族で「精華園」を経営してきました。後は継いでいますが、現在も父親と二人でこのカーネーション農家を経営しており、現在は年間で約50万本のカーネーションを生産しています。

精華園が生産しているカーネーションを中心とした植物

 
  • 岩田さんはいつから花き農家の仕事をしようと思っていたのでしょうか。
学生の頃は、花き農家の仕事に就きたいとは思っていませんでした。
通っていた高校から、大手電気メーカーに就職できるルートがあったので、ずっとその電気メーカーに就職したいと思っていたんです。ただ、私が就職活動をしていた頃が就職氷河期で、毎年新卒採用していた企業が、どこも採用打ち切りになってしまい、このまま待っていてもダメだと思い、一度農業を頑張ってみようと、農業の専門学校に進学することにしました。
専門学校を卒業した後は農家で働く際に必要な研修を受けて、そこで今の奥さんと出会って、研修後は精華園に就農しました。渋々はじめた花き農家の仕事でしたが、早々に父親から経営移譲して、仕事をはじめて約5年ほど経った頃から、栽培の技術が確立して、品質の高い花を育てることコツが掴めて、花の仕事の面白さがわかってきました。
  • 岩田さんは普段どのようなお仕事をされているのでしょうか。
カーネーションの生産はもちろんのこと、WEB制作や通販サイトの運営、パッケージデザイン、編集、写真撮影、契約手続き……など、農家を運営するということは“植物を育てること”だけが仕事じゃなくて、植物を届けるために必要なことはなんでもやらないといけないんです。最初は花の生産だけやっていればいいと思っていたのですが、そんなことはなくて。最近では営業するようにもなりました。
  • 花き農家も、積極的に営業を行っているのですね。
10年ほど前までは、花きの卸売市場に出荷すれば売れる仕組みになっていたので、営業を全くやっていなかったのですが、今は、花屋さんや個人のお客さまにも直接販売しています。数年前に100件ほど営業に回って、そこで出会った方と今もお取引していますね。
つくれば売れるという時代ではなくなったので、今はこういった営業も生産者にとっても必要な仕事なんです。
  • カーネーションにこだわって生産を続けられているのには、何か理由があるのでしょうか?
カーネーションを47年間作り続けていたというのもありますし、薔薇など他の花にも挑戦してみたことはあるのですが上手くいかなくて。いろんな花を試してみて、やっぱりカーネーションが自分に1番あっているな……と思いました。
カーネーションはとても優れた花なんですよ。花持ちが良くて、花びらが散らなくて、リーズナブルな価格帯で、管理がらく。こんな良い花はなかなかないので、もっと評価されても良いと思っています。カーネーションの魅力をより多くの人に知っていただき、価値を高める活動も出来たらと思っています。
 
 

カーネーションを使用した花びら染めの様子

 

  

 

台風15号の被害によって「一度は廃業を覚悟した。」

常に自然災害と隣り合わせ、安定のない農業の世界。

 

2019年、台風15号による被害を受けた精華園の様子

 

  

  • 2019年9月、関東地方を通過した台風15号は,強風による風害や豪雨による水害を発生させる甚大な被害をもたらしました。台風の影響によって千葉県全域の農家が、ビニールハウスの倒壊や損壊が相次ぎ、農林水産業の調べによると被害額が815億円にのぼり、東日本大震災の被害額(346億円)を超えたとのことでした。(農林水産省「令和元年台風15号に係る被害情報」2019年12月5日付による)上記のような状態のなか、精華園さんではどのような被害があったのでしょうか。
 
最大瞬間風速57.5m/sを記録する強風が吹きまして、カーネーションを育てていたガラスハウスのガラスが 85%以上割れてしまいました。また、その割れたガラスの破片が、ハウスの中にあった花や資材を全部傷つけてしまいまして。鉄も切れてしまうようなすごい状況だったんですよね。
被害の光景を見た瞬間、頭には“廃業”の文字が浮かびました。
台風15号が通過してから2週間近く停電状態が続いて、生きるのに必死で、その時は農家の今後についてあまり深く考える余裕もなくて、とにかく大変でしたね。
 
  • 存続が危ぶまれるほど大きな被害を受けられていたのですね。そこから現在まで、どのように持ち直したのでしょうか。
 
あまりにもひどい状況だったので、多くのメディアに取材され取り上げられました。そのおかげで、ニュースを見て駆けつけてくださったボランティアさんが沢山いらっしゃって、飛び散ったガラスを全部拾ってくださったんです。ボランティアさんいなかったら、私は100%農家を廃業していました。社内スタッフだけで現状復帰しようとすると3 - 4年かかるという話を聞いて、心が折れてしまって、家族会議で、農家をやめてサラリーマンとして働こうという決断を一度したんです。
ただ、再建業者さんに再建用の部品を発注してしまっていて、キャンセルはできないよ……と言われたので、キャンセルできないなら結局やるか!という決断になって。辞められなくなっちゃったんですよね。笑
国や県や市が、何割か費用を補助するので再建しませんか?と提案くださって、様々なサポートをいただいて……でも結局、再建するのに1年間の売上を丸々全て使うことになってしまいました。
 
  • 廃業された農家さんも多かったと伺いました。
 
そうですね、私たちは継続する判断をしましたが、未だにそれが良かったのか悪かったのか答えは出ていません。次の10年、花の価値が下がらず、何事もなく運営できたら、投資したお金が回収できるので、やって良かったと思えるのではないかと思っているのですが。そこはまだ誰にもわからないので。ただ、現状復帰が完了して、種を植えて、花が咲いたのを見た瞬間は、再スタートして良かったと心から思いました。
まだゴミの一部は残っていますが、再建に必要な費用を支払って、ここ数ヶ月でやっと通常運転に戻りかけたところです。
ちょっとした気温の変化や自然災害が原因で、植物は大きな影響を受けるので、まだまだ安心できませんが……。
 
 
 

カーネーションはとても優れた花。

価値を高める方法を模索して、新しいことには挑戦していきたい。

 

精華園のカーネーションで染めた mooneyoのルームウェア

 

  • 大変な状況のなか「mooneyo」の取り組みに協力くださったのは、どうしてでしょうか?
 
「mooneyo」の取り組みに協力しようと思ったのは、カーネーションの価値を高めたり、魅力を伝えたりするきっかけになればと思ったからです。
あとは、もともとカーネーションを加工した取り組みには興味があったんです。前に香水を作るチャレンジをしていて、様々な研究所に問い合わせたり、専門家の方にアドバイスいただいたり、蒸留の仕方も勉強したりしたんですけど……カーネーションの香水の香りって、イメージ湧きますか?
 
  • とても興味はありますが、カーネーションの香り……すぐにはイメージできないかもしれません。
 
 
私もカーネーションの香りをすぐにイメージできなくて、人々に親しみのない香りをつくってもダメだな……と思って、プロジェクトを止めちゃったんですよね。つくっても流行らないと判断しました。
 
  • 精華園さんのカーネーションは、花びら染め / 草木染めとの相性がとても良くて大活躍しています。精華園さんに伺い、育てられているカーネーションに触れたことで、運営側のカーネーションに対する想いが深まりました。
  
精華園さんでは、様々なカーネーションを生産されていますが、顧客に求められているカーネーションはどういったものでしょうか。
一人一人が欲しいと思ったものに価値があるので、珍しいものが価値が高いという訳でもないですし、私たちが育てているカーネーションは基本すべて同じ価格です。
様々な色のカーネーションがありますが、天然で色づいているものがほとんどです。最近、染めたカーネーションの生産を初めてみました。染めのお花に関しては、賛否両論あって、長く花のお仕事をされている方は天然を好み、染めの扱いを懸念されることが多いです。
私もそちら側の人間ではあったのですが、お花の売れゆきを見て、新しいことにもチャレンジしていけたらと思っています。
 
 

草木染めの様子

 

  • 規格外のお花は、実際どのくらい出るものなのでしょうか。
 
 
虫に食われてる、茎が折れている、茎が細すぎる、柔らかすぎるなど……様々な理由から、規格外となって販売できない花が発生してしまいます。季節によって割合は大きく変わるのですが、特に秋は虫が発生しやすく、廃棄するカーネーションが増加します。
私たちは高品質なカーネーションにこだわって、少しでも良いものをお届けしたいと考えているので、少しでも虫に食われていたら販売しません。近所の農家さんにも厳しすぎると言われます。笑
でも、そういった厳しい選定やこだわりが、お客様の信頼に繋がっていると思っています。今まで廃棄扱いとなったカーネーションは、ほとんどパートさんに持って帰っていただいてました。
 
  • 精華園さんのカーネーションはどちらで購入できますか?
 
お花に関係するお仕事をされているプロの方は、市場や仲卸業者さんからお買い求め頂けます。一般個人の方は、関東のお花屋さんにも多く流通しています。
あとは、自社の通販サイトでも直販しています。毎年、母の日には数量限定でカーネーションの花束を販売していて、いつもすぐに完売してしまいます。数量限定になってしまっている理由は、普段仕入れてくださっている業者さんを優先して、一番需要のある母の日に渡さないと怒られちゃうからなんですが。笑
今年は、mooneyoとコラボレーションした、母の日用のカーネーション商品を販売しているので、ぜひ購入いただけると嬉しいと思っています。
 
 

💐特別なカーネーションセット★
💐母の日カーネーション★特別セット限定数1

  

台風15号による大きな被害があるなか足を止めることなく、カーネーションの価値を高めるための取り組みを続ける精華園の岩田さん、大変な状況のなか mooneyoの取り組みに賛同くださったこと、改めて感謝いたします。
 
精華園さんとの取り組みを通して、花屋さんに並ぶ花たちは、様々な農家の苦労があり、困難を乗り越え、美しく咲き販売できている……ということを知れて、花に対する想いや愛着がさらに増しました。
普段、花屋さんでカーネーションを購入されている方は、ぜひ一度、精華園さんから新鮮で高品質なカーネーションを購入してみてはいかがでしょうか。